成長の記録

 森山が紅葉に染まった、ある穏やかな日、朽ちて横たわった老木の穴に一つのドングリが転がりこみました。そして間もなく厳しい冬を迎えました。ドングリは凍える寒さから身を守ってくれるふわふわの落葉の布団もなく、冬をじっと耐えなければなりません。でも不思議なことに、雪に覆われると何だか温かく感じました。そこはとても居心地がよかったので、ドングリは思い切って芽を出すことにしました。春の暖かい陽ざしの中でドングリは殻を少しだけ広げて外界に足を伸ばしました。芽生えたばかりのドングリはそこが幹の上だとはまだ気がつきません。ドングリは、これからどんなことが起こるのか不安でいっぱいでしたが、毎日を一生懸命生きることにしました。ある日ようやく芽生えたドングリを、山の整備をしているおじさんが偶然見つけました。「おや!こんなところにドングリが芽を出している」 「ずいぶん運のいい子がいるものだ、しばらく見守ってやろう!!」  と、おじさんは心にとどめました。
 
        2010年5月2日
 
     2010年5月2日
 ングリ坊やを心にとめたおじさんでしたが、一月もするとすっかり忘れてしまいました。ところが、ドングリの話を聞いていた千葉に住む心やさしいおじさんは忘れていませんでした。ドングリの行方をいつも気にしていましたが、その後の様子がなかなか伝わってきません。 そこで、心やさしいおじさんは、忘れっぽいおじさんに「ドングリは元気にしていますか」と、尋ねてみました。尋ねられたおじさんは、ドングリの行方が少し気になりましたが、「大丈夫」と、すっかり安心しきっていました。
 「さて、そろそろドングリの様子を見に行くか。だいぶ大きくなっただろう」と、思い立ったのは夏も過ぎた秋になってからでした。ドングリ坊やの場所を訪ねてビックリ!!跡かたもありません。「しまった、油断した」と思っても後の祭り。
 周りを見渡すとドングリ坊やが乗っていた枯れ木は、乱暴に引きちぎられています。木の中の虫を探してクマが大きな爪で引きちぎったに違いありません。
 
2010年9月5日
 
2010年9月5日
 ングリ坊やが無くなって、動揺したおじさんでしたが、しばらくして落ち着き、冷静に考えてみました。木が引きちぎられてもドングリ坊やは、転がり出た土の上で 生きているかもしれない。「そーだ、そーに違いない、あわてることはなかった」
 と、そこでおじさんは期待に胸をふくらませて再び訪ねてみました。しかしそれは期待で終わってしまいました。ドングリのかけらすら見つかりません。沢山の人がドングリ坊やを見守っていたのに、大変残念です、心が痛みます。
 そして思いました「これでこの物語は終わってしまう」「これが現実、自然とはそういうものだ」「メルヘンチックな事はよしなさい」と。
 ヤレヤレ、トボトボとおじさんは重い足取りで帰り道をたどって行きました。下ばかり向いていたのでしょう、来るときには気付かなかった景色に出会いました。そこにはドングリ坊やが沢山ひしめき合っていたのです。
 すこしホッとしました。
 これでこの物語は終わりとします。反省を込めてページを一新。「黒森のおもしろ」で、黒森山で見つけた不思議なもの、面白いものを紹介してゆきます。
 
2010年10月20日
 
2010年10月20日
   
   

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